「んー何度食べても美味いよな」

「うん。そうだね」

赤也君はクレープを食べて満足気に笑った。










                    What a lonely world it will be with you away!










今は春休み。

しかし、立海大附属には休みなんて関係なく練習がある。

そうでもしなければ、全国なんて行けないだろう。

今日も朝から練習にいそしみ、部活が終わる頃にはもう日が沈んでいた。



、クレープ食べていかねえ?』



赤也君に誘われて制服デート。

いつもならまっすぐ家に帰るけど、今日はもうちょっと一緒にいたいみたい。

でも、私も1秒でも長く赤也君と一緒にいたいから誘ってくれて嬉しかった。



「あー美味しかった」

赤也君はクレープを包んでいた紙を丸めて近くにあったゴミ箱に投げた。

それは弧を描いてうまい具合にゴミ箱の中に入った。

私も真似して投げてみたけど、ゴミ箱に届く前に落ちてしまった。

そんな私に赤也君は一言。

「ヘタクソ」

「今日は調子が悪いんだよ」

「運動神経ないだけだろ」

運動神経はあまり関係ないような気がするけど、

ヘタなことにかわりはないから言い返せない。

私も練習したらテニスできるようになるのかな。

でも、どんなに練習しても赤也君の足元には及ばないんだろうな。

そんなことを考えながら、溜め息をひとつ。





明日は新しいクラスが発表される。

私たちももう3年生だ。

1年経つのは早いけれど、充実してたと思う。

赤也君と出会ってからは特に。

最初は絶対に赤也君のことを好きにならないと思ってたけど、気づいたら好きになってた。

人の気持ちって不思議だよね。



まあそれは置いといて、私は明日のクラス替えが気になって朝から落ち着かないのだ。

中学最後の1年間、赤也君と同じクラスになれるかどうか。

別に違うクラスになったからといって私たちの関係が終わるわけではないが、

少しでも多く赤也君と同じ時間を共有したい。





「あ、そうだ。今日帰り遅くなってもいい?」

突然、赤也君が思い出したように手を合わせた。

「え?うん。大丈夫だけど」

「じゃあ、いいとこ連れてってやるよ」

そう言うと赤也君は私の手を引っ張って走り出した。

食べてからすぐに走るのはよくないと思うけど、今の赤也君には関係ないみたい。



昔から運動は苦手だ。

走るとすぐにお腹が痛くなる。

しかも、今はテニス部の赤也君に手を引っ張られている。

「ちょ、ちょっと赤也君!?」

流石赤也君といったところだろうか。私には速すぎる。










「ほら、着いたぞ」



何度か呼びかけてやっと止まってくれた赤也君。

どうやら早く私を目的地に連れて行きたかったようだ。

私は別に急がなくてもいいことを告げて、歩いてもらうよう頼んだ。

途中で山道に入って驚いたけど、赤也君はそんな私を気にせずどんどん進んでいった。

そして、赤也君に連れられてきた場所。



「うわぁキレイ!」



そこからは街の光が溢れて見えた。

ここに私たちが住んでるんだと思うと、ちょっと不思議な感じ。

「な、いいところだろ!」

「うん。ありがとう赤也君」

赤也君は自慢気に言った。

でも、何で赤也君がこんな場所知ってるんだろ。

小さいときにここで遊んでて、急に来たくなったとかかな。

テニスばっかりで他のことになんか興味なさそうだから意外だな。



光の中に紛れている大きな建物を見つけ、私は指を差して叫んだ。

「あれって学校だよね!」

「そうだな」

「明かりついてるけど、誰かいるのかな」

「さあ、誰か学校の中でイチャついてんじゃないの?」

「え!?」

もう、なんでそういう考えに辿り着くかなあ。

赤也君らしいといえばそうかもしれないけど。





こうして赤也君と一緒に過ごすのが好き。

でも、クラスが離れちゃったら赤也君と過ごす時間が減ってしまう。

ただでさえ部活で忙しい赤也君だから、やっぱりそれは悲しい。



「はあ」

「なんだよ朝から溜め息ばっかりついて」



気づくと溜め息をついていた私。

それは赤也君にもはっきり聞こえてたようだ。

「別にたいしたことじゃないよ」

「たいしたことじゃなくてもいいから言ってみろよ」

「でも、言ったら笑われそうだもん」

「笑わないって」

こうなったらもう赤也君は手がつけられない。

私から溜め息の理由を聞き出すまでしつこく付きまとうに決まっている。

私はもう一度溜め息をついた。

「仕方ないなあ。絶対笑わないでね」

「おう」

赤也君は私の顔をじっと見て、次の言葉を待った。



「明日のクラス分けで赤也君と一緒になれるかなーって・・・・・」



最後まではっきりと言うことはできなかった。

なんだか赤也君をずっと見てるのが恥ずかしくて、視線をそらしてしまった。

「・・・・・・・・・・・・」

「赤也君?」

黙ったままの赤也君に視線を戻すと、赤也君は目を丸くしていた。

いつもの鋭い目つきとは違っていて、なぜか赤也君のことが可愛く見えた。

「バカだな」

「え?」

赤也君の呟きを聞いた直後、私はその腕によって抱きしめられていた。





と俺が別のクラスになるわけないだろ」





その自信はどこからくるのだろうか。

赤也君は絶対自信過剰だと思う。

「な、なんで!?もしかして赤也君もう新しいクラス知ってるの?」

「明日貼りだされるんだから知るわけないだろ」

「じゃあなんで一緒のクラスになるって言うの?」

「なんとなく」

なんとなくで言われても困る。

もう、私はこんなに不安なのにそんなに軽く言わないでよ。

「心配してもしなくても結果が同じならいいほうに考えとけって」

「でも・・・・・」

赤也君のポジティブな性格は心配性の私にとっては羨ましい。



「大丈夫だから」



赤也君の腕の力がいっそう強くなるのがわかった。

その後、赤也君は私を抱きしめていた腕を私の肩に持ってきた。

そして、「なっ」と私に同意を求めた。

「・・・・・うん」

不安で堪らなかったけど、赤也君のその目を見たら、なんだか大丈夫な気がしてきた。

きっと赤也君が私の不安を取り除いてくれたんだろう。





「ありがとう」



「何が?」

「んーなんとなく」

赤也君の真似をして言ってみた。

本当は理由を言うのが恥ずかしかっただけだけど。

「へえー」

赤也君は何か悪戯を思いついた子供のような顔をした。

「じゃあ、お礼にチューしてよ」

「え?」

きっと赤也君は私が言った意味をわかっていたんだ。

でも、敢えて知らないふりなんかしちゃって・・・・・

相変わらず意地悪だよね。

確かに不安を拭ってくれたことには感謝するけど、

なんで私からキスすることになるんだろ。

「ほら、早く!」

「え・・・でも・・・・・」

「あーもう!」

赤也君は痺れを切らしたのか、私の顎を持ち上げた。





チュッ





そして、触れるくらいのキスをした。

からしないから俺からしちゃったじゃん」

「べ、別に私はするって言ってないよ!」

赤也君がしろって言っただけなんだから。

「ったく、照れんなって」

そう言うと、赤也君は私の頭を2回叩いて片手を差し出した。



「帰ろっか」



「うん」

私は差し出された手に自分のものを重ねた。










結局、また赤也君と同じクラスになれたんだけど・・・

本当に赤也君知らなかったんだよね。

なんだか当たってて逆に怖い。

でも、一緒になれたからいっか。
















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葵さんからの2700番リクです。
デートの話のはずがなぜかクラス替えの話に・・・
甘くできたのかよくわからないです。

題は「君がいなくてはどんなに寂しい世の中になることだろう」です。



2005/03/29   群青豊




「ao」の群青豊さんからキリリクで頂きました。。
いいですよね〜、制服デート。まさに学生の特権!!
群青豊さんの書く赤也君はホントにカッコ可愛いのですよvvv

この夢も赤也夢「影法師シリーズ」の一つなのでぜひ他の夢も読んでみてください。。